



概要
✓寝させる→自動詞「寝る」の使役形

母親が子どもを寝かせる

夫が妻を寝かせる

母親が子どもを寝させる

夫が妻を寝させる
全く同じ意味の言葉が二つ?!

んー、わからない。謎です!

謎ですって?一体どうしました?

「寝かせる」と「寝させる」の意味の違いなんですが…。
母親が子どもを寝させる

あれ、全く同じ意味の文が二つある?

そんな無駄なことある?だったら一つでいいじゃん。

では、一つずつ紐解いていきましょう。
語形で違いを考える

それぞれ自動詞と他動詞どちらだと思いますか?

どちらも対象(物)に対する人の働きかけなので両方とも他動詞っぽいよね。

そうですね。
そして、「寝かせた」もしくは「寝させた」結果はこれですね。

あ、寝た。
そう。寝た。

ということで、自動詞は「寝る」です。
✓結果→寝る
※他動詞・自動詞の原因と結果の関係については自他①見分け方編をご参照ください。
寝かせる 寝る
寝させる

あれ?他動詞が二つ?

形が似ているので両方とも他動詞っぽいですね。

あ!「他動詞の代わり」っていうのもあったよね。
※「他動詞」と「他動詞の代わり」については自他③使役編をご参照ください。

ということは、どちらかが「他動詞」でどちらかが「他動詞の代わり」になるってこと?どういうこと?

少し近づいてきました。
では「他動詞の代わり」とは一体何で表せましたか。

はい!
自動詞の使役形です!

材料はそろいましたね。
では、「寝る」の使役形は何でしょうか。
※使役形の活用についてはこちらの記事をどうぞ。

はっ!「寝させる」だ!

そうです。
✓寝させる→自動詞「寝る」の使役形

「他動詞文」と「使役文」になるわけかあ。
ん~!ややこしい…

ここの意味の違いをもう少し深堀した方が良さそうですね。
ニュアンスで違いを考える

「寝る」という結果に対して、働きかけが二つ…。
でも、ここに意味の違いってそんなにないでしょ?
それならどちらか一つでいいじゃん。というか、どちらでもいいじゃん。

使役文と一口に言っても中々奥が深いのですが、
ここでは「寝かせる」と「寝させる」の違いを理解するための他動詞と自動詞の使役形について考えてみましょう。
ココがポイント!
前回の自他③の説明を少し思い出してください。
自他③で紹介した自動詞「咲く」の使役形「咲かせる」は「他動詞の代わり」になるとのことでしたが、今回の「子どもを寝させる」はこの時とは少し意味が異なり「他動詞の代わり」と位置付けるには使役の意味が強いように感じます。
ただ今回は、他動詞が人の対象への直接的な働きかけを表し、使役が間接的な働きかけを表すという点から、他動詞「寝かせる」と自動詞「寝る」の使役形「寝させる」の意味の違いを考えていきたいと思います。(※使役文の詳細は、別記事「使役文について」をご参照ください。)

では、「直接的」「間接的」とは何か。イメージしてみましょう。



なるほど。
確かに「寝かしつけ」って言葉があるくらいだから、子どもでイメージするとわかりやすいね。

大人でもイメージすることはできますよ。
例えば、寝に行こうと立ち上がったら…

妻①
あ!「イタタタタ…腰やっちゃった」の時ね!

①
この状況は寝させるじゃなく、寝かせるだよね。

妻②
私は疲れた時に、よく夫に「ちょっと寝させて」と言うよ。

②
でも、確かにこれは別に抱っこしてベッドに連れて行ってほしいわけじゃないもの。
これに対して夫も「寝ておいでよ」って声かけするだけだから、私の言いたいことは伝わっているのよね。
寝る人の意志があるかないか

いずれにせよ「寝る」という結果に繋がるから、どちらでも使える場面は多々ありそうですが、状況によってはやや不自然に聞こえる時もあるでしょうね。

赤ちゃんや意識のない人など、自分の意志で動けない人を「寝る」に繋げるには補助の手が入る「寝かせる」の方がしっくりくるし、
「寝るから許可をください」みたいな時は、使役形「寝させる」の方がしっくりくるね。
【参考文献はこちら】
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