【自他④発展編】「寝かせる」と「寝させる」の違い

【自他④発展編】「寝かせる」と「寝させる」の違い 文型
【自他①見分け方編】もう「を」で迷わない!自動詞他動詞の見分け方
概要✓「通過点」「起点」の「を」をとる動詞は他動詞ではない。✓他動詞につく「を」は「対象」の用法である。✓他動詞→原因〈対象(物)に対する人の働きかけ〉を表し、それだけに注目した表現。 直接的な働きかけであるというニュアンスがある。✓自動詞...
【自他②受身編】他動詞の受身形は自動詞の代わりになります。
概要✓ペアになる自動詞がなく、でもその他動詞文の結果を表現したい場合→その他動詞の受身形を自動詞の代わりとして使うことができる。【他動詞】    【自動詞】食べる       ✖【他動詞】    【自動詞の代わり】食べる       食べら...
【自他③使役編】自動詞の使役形は他動詞の代わりになります。
概要✓ペアになる他動詞がなく、でもその自動詞文の原因を表現したい場合→その自動詞の使役形を他動詞の代わりとして使うことができる。【他動詞】   【自動詞】  ✖       咲く【他動詞の代わり】   【自動詞】  咲かせる        ...
【イラスト付き解説】使役文について
使役文について使役形の活用使役形の動詞の活用についてはこちらの記事をご参照ください。使役文のつくりはじめの文を使役文にすると、動詞は使役動詞に変わります。使役文になると、新たな人物が加わり主語が変わります。✓はじめの文➡使役文(主語変わる)...

概要

寝かせる→他動詞
寝させる→自動詞「寝る」の使役形
他動詞寝かせる
→主語の人直接的な働きかけによって「寝る」状態にする。

母親が子どもを寝かせる

夫が妻を寝かせる

自動詞「寝る」の使役形寝させる
→寝る人意志によって「寝る」状態にする。(主語の人は指示や許可のみ)

母親が子どもを寝させる

夫が妻を寝させる

寝る人意志があるかないかに注目する。

全く同じ意味の言葉が二つ?!

んー、わからない。謎です!

謎ですって?一体どうしました?

「寝かせる」と「寝させる」の意味の違いなんですが…。

母親が子どもを寝かせる
母親が子どもを寝させる

あれ、全く同じ意味の文が二つある?

そんな無駄なことある?だったら一つでいいじゃん。

全く意味が同じである複数の語は、一つの言語の中に存在しないと言われています。

では、一つずつ紐解いていきましょう。

語形で違いを考える

「寝かせる」「寝させる」

それぞれ自動詞と他動詞どちらだと思いますか?

どちらも対象(物)に対する人の働きかけなので両方とも他動詞っぽいよね。

そうですね。

そして、「寝かせた」もしくは「寝させた」結果はこれですね。

あ、寝た。

そう。寝た。

ということで、自動詞は「寝る」です。

✓原因→寝かせる、寝させる
✓結果→寝る

※他動詞・自動詞の原因と結果の関係については自他①見分け方編をご参照ください。

他動詞?   【自動詞】
 寝かせる     寝る
 寝させる

あれ?他動詞が二つ?

形が似ているので両方とも他動詞っぽいですね。

あ!「他動詞の代わり」っていうのもあったよね。

※「他動詞」と「他動詞の代わり」については自他③使役編をご参照ください。

ということは、どちらかが「他動詞」でどちらかが「他動詞の代わり」になるってこと?どういうこと?

少し近づいてきました。

では「他動詞の代わり」とは一体何で表せましたか。

はい!

自動詞の使役形です!

他動詞の代わり ー 自動詞の使役形

材料はそろいましたね。

では、「寝る」の使役形は何でしょうか。

※使役形の活用についてはこちらの記事をどうぞ。

はっ!「寝させる」だ!

そうです。

つまり、
寝かせる→他動詞
寝させる→自動詞「寝る」の使役形

「他動詞文」と「使役文」になるわけかあ。

ん~!ややこしい…

ここの意味の違いをもう少し深堀した方が良さそうですね。

ニュアンスで違いを考える

「寝る」という結果に対して、働きかけが二つ…。

でも、ここに意味の違いってそんなにないでしょ?

それならどちらか一つでいいじゃん。というか、どちらでもいいじゃん。

使役文と一口に言っても中々奥が深いのですが、

ここでは「寝かせる」と「寝させる」の違いを理解するための他動詞自動詞の使役形について考えてみましょう。

ココがポイント!
前回の自他③の説明を少し思い出してください。
自他③で紹介した自動詞「咲く」の使役形「咲かせる」は「他動詞の代わり」になるとのことでしたが、今回の「子どもを寝させる」はこの時とは少し意味が異なり「他動詞の代わり」と位置付けるには使役の意味が強いように感じます。

ただ今回は、他動詞が人の対象への直接的な働きかけを表し、使役が間接的な働きかけを表すという点から、他動詞「寝かせる」と自動詞「寝る」の使役形「寝させる」の意味の違いを考えていきたいと思います。(※使役文の詳細は、別記事「使役文についてをご参照ください。

他動詞他動詞の代わり(自動詞の使役形)の違い
・他動詞→直接的な働きかけであるニュアンスがある。
他動詞の代わり→間接的な感じがある。
(自他③より)

では、「直接的」「間接的」とは何か。イメージしてみましょう。

他動詞寝かせる」について
直接的イメージ
例:「母親子どもを寝かせる
一人では寝られない子どもに対し、歌いながらとんとんしたり、添い寝をしたり、抱っこしたりして、主語の人物理的な接触を起こして寝るように仕向けるイメージ。
自動詞の使役形寝させる」について
間接的イメージ
例:「母親が子どもを寝させる
主語の人は「寝なさいよ」などと指示するだけで、寝る人自分の意志で寝るイメージ。

なるほど。

確かに「寝かしつけ」って言葉があるくらいだから、子どもでイメージするとわかりやすいね。

大人でもイメージすることはできますよ。

例えば、寝に行こうと立ち上がったら…

①「夫が妻を寝かせる」

妻①

あ!「イタタタタ…腰やっちゃった」の時ね!

この状況は寝させるじゃなく、寝かせるだよね。

②「夫が妻を寝させる」

妻②

私は疲れた時に、よく夫に「ちょっと寝させて」と言うよ。

でも、確かにこれは別に抱っこしてベッドに連れて行ってほしいわけじゃないもの。

これに対して夫も「寝ておいでよ」って声かけするだけだから、私の言いたいことは伝わっているのよね。

他動詞寝かせる
→主語の人直接的な働きかけによって「寝る」状態にする。
自動詞の使役形寝させる
→寝る人意志によって「寝る」状態にする。(主語の人は指示や許可のみ)

 

寝る人の意志があるかないか

いずれにせよ「寝る」という結果に繋がるから、どちらでも使える場面は多々ありそうですが、状況によってはやや不自然に聞こえる時もあるでしょうね。

赤ちゃんや意識のない人など、自分の意志で動けない人を「寝る」に繋げるには補助の手が入る「寝かせる」の方がしっくりくるし、

「寝るから許可をください」みたいな時は、使役形「寝させる」の方がしっくりくるね。

寝る人意志があるかないかに注目する。

 

参考文献はこちら

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